「ことば」を考える──資料──

2003年9月7日 第8回 人文学セミナー

1.秋山基夫「日本語は乱れているのがそれでいいのだ美しいのだという題にしておくか」は、1971年に発表(朗読)されて以来、そのテキストは変更されています。このテキストは、片桐ユズル他編『ほんやら洞の詩人たち』(昌文社、1979)から転載。

  1. 秋山基夫は、「日本語は乱れている」という主張のどのようなところに反対しているのか、読み取ることができますか。
  2. 面白いと感じる人は、その面白さがどのように創りだされているかを、ことばにしてみるといいかもしれません。
  3. 「ことばのあるべき姿」に、どのような基準がありうるかについて、この詩は何も語っていないのではなく、何かを語っていると思いますが、どうでしょうか。

2.読売新聞日本語企画班『新日本語の現場』

  1. 「日本語から足元を見つめる」というタイトルのついた序文のiiページ「言葉に関心をもっている人々は日頃から強い苛立ちを覚えている。『古き良き日本』が壊れようとしている崩壊感、……という怒りが日本語ブームの根底にあるのではないか」などの部分に示される問題意識に着目。
  2. また、iiiページ「言葉を通した日本社会のあり方、日本人とは何かを問うことであり、日本人の思考様式の特徴をさぐることであり、世代間の認識の違いを明らかにすることでもあった」にも着目。
  3. 11ページ「“とか弁”は、移り変わりの激しい若者用語としては異例なほど長命だ。80年前後にはやった『ナウい』『ぶーたれる』が死語となったのと比べて、衰える気配はない」の部分は、なんだか論理的でないようだが、どうしてだろう。
  4. また、17ページには「功罪相半ばするあいまい表現だが、どう付き合っていくか、あいまいにすませるわけにはいかない問題でもある」とあるが、どうやってはっきりさせることができるのだろう。

3.ジョージ・オーウェル『1984年』の「付録 ニュースピークの諸原理」は、かなり手ごわい。全部を読むことはできなくても、まったくかまわない。

● ジョージ・オーウェル『1984年』──出版は1948年
「ニュースピーク」極度に洗練された思想統制としての言語統制だが、「スピーク(ことば)」と呼ばれ、「統制」とはだれも言わない。簡略化と、少ない語彙を特徴とし、あらかじめ決められた観念(機械的職務など)以外は思いつかないよう工夫されている。社会(このことばは、ニュースピークにはおそらく存在しない)は、「権力システム」 以外の意味をほとんどもたない。もっとも、「権力」ということばもニュースピークには含まれないはずである。主人公ウィンストンが拷問を受ける、法と秩序の省は「愛情省」と呼ばれている。

  1. 492ページには、Old thinkers unbellyfeel Ingsocは、「オールドスピーク」ではThose whose ideas were formed before the Revolution cannot have a full emotional understanding of the principles of English Socialism. となると書かれているが、いったい何を言いたいのだろう。(ちなみに、bellyは「腹」、feelは「感じる」、頭についているunは否定を意味する)
  2. 同じページの下段「われわれが既にfreeという言葉の……」から493ページの2行目「……一語に含まれてしまった」までをよく読み、われわれ自身の状況と比べてみよう。教科書以外に、こういった言葉を使う機会があるだろうか。
  3. 498ページの、アメリカの独立宣言の一節を引いた部分にも着目。

4.レイ・ブラッドベリー『華氏451度』──これは、とにかく読んでおく。

● レイ・ブラッドベリー『華氏451度』
ブラッドベリーがこの本を出版した1953年は、マッカーシーらによる「赤狩り」(共産主義思想の弾圧) がアメリカを席捲していた。主人公モンターグは“fire department”に勤務する“fireman”である。消防士ならぬ「焚書官」は、消化ホースならぬ火炎放射器をかかえ、発見した書物を、ときには住宅ともども焼き払うのが仕事。“fire department”には、機械シェパードが配置されていて、そのするどい嗅覚装置で麻薬犬のように本の臭いを嗅ぎわける。機械シェパードは、もちろん人間より速く走る。上空からは、ヘリコプターが追跡する。シェパードの鼻先からは、長さ10センチの鋼鉄針がとび出し、麻酔薬を打ちこむ。
この世界の住人は、だれもが「海の貝」とよばれるイヤホーンを耳にはめ、たえず「音楽」を聞いている*。家には、もちろん、四方の壁がテレビになっているテレビ室がある。アナウンサーは不特定多数の視聴者に話しかけるが、各家庭にある変換機(100ドル)によって、自動的に「モンターグのおくさん」などと呼んでくれる。*ウオークマンの登場は、1979年のこと

5.京都新聞「いまどきの若者?」

──中尾の捉えている「若者の意識」には、若者の立場から、不充分なところ、あるいは誤解がないか考えてみる(京都新聞「いまどきの若者?」を読む)。

6.京都新聞「現代のことば」

──「バイト用語」 「『リテラシー』?」「『イー・ラーニング』?」 「『環境問題』は『公害』」の4本は必読。