さらに創造的で実践的な人文学部へ──社会メディア学科・文化表現学科の計画──

『木野通信』No.35 巻頭言, 2002年4月

京都精華大学の人文学部はつねに成長し進化する途上にあります。それは人文学部が、数ある大学学部のなかで、つねに一歩先を走りつづける存在でなければならないからでもあります。現在、人文学部は開設から13年を経過したところですが、すでに2000年4月には人文学科に加え環境社会学科を開設しました。それは、環境問題が現実の社会的課題となり、新たな人間観・自然観の自覚的な探求を標榜する人文学部が、いよいよ実践的に向きあうべき課題であったからです。

今回は、さらに人文学科を、その自由で創造的な特性をより強化しながら、新しい2学科に再編成します。いわゆる情報化あるいはグローバリゼーションによって大きな転換期にある社会という側面と、また同様に大きな変革期にある文化という側面のそれぞれに、確かな軸足をおいて学べるようカリキュラムを組みなおす計画です。新たな2学科とは、「社会メディア学科」と「文化表現学科」です。「環境社会学科」とあわせて3学科となる人文学部は、開設当初からの教育・研究の理念であった学際主義、体験主義、国際主義をさらに強めながら、自由な思考と創造性豊かな人材を世界に送りだしたいと願っています。

次世代の社会を担うのは、言うまでもなく若い人びとです。人文学部に集まる学生諸君が、これまで以上に発想力と実践力を発揮できるよう、新たに情報発信や芸術・文化表現のためのワークショップ形式の科目群を、3学科の共通カリキュラムとして計画しています。芸術と文化の大学としての強みを存分に生かし、「表現する大学」としての実践力を発揮することが大きな目標です。

他大学に先駆け行ってきた国内外でのフィールドワークもさらに充実させて、一人ひとりの学生が直接世界と向きあう自立の力を育てることにも、これまで以上に力を入れる計画です。京都精華大学には現在、海外10か国以上から約300人の留学生が学んでいます。15万人の学生を擁する大学都市京都に在住する留学生3000 人のなんと1割が、私たちのキャンパスに集まってきているのです。新しい学科の計画には、世界の多様な地域からの人びとが集まり、共通の問題を考え、学びあうというこの条件を、さらに生かすことができます。

このように、まだ若く成長しつづける人文学部ですが、この間、学内の調査によっても、また学外の機関による調査によっても、授業や学生生活について学生諸君の示す満足度はつねに全国のトップ・ランクにあります。その根底にあるのは、なによりも、自由に考えることができる場であること、また学生がマスとして扱われるのではなく一人ひとりが人間として尊重されることだと言って間違いないでしょう。卒業していく人たちが、もう一度入学できるならば、やはりこの大学の人文学部に入ってもっと勉強したいと言うのも、けっして誇張された表現ではないと思います。

さらなるパワーアップをめざす新しい人文学部の姿にご期待ください。