学部として独立するデザインとマンガ

『木野通信』No.40 巻頭言, 2005年8月

昨年は人文学部で、教育方法の工夫と社会貢献が文部科学省の「特色ある大学教育支援プログラム」によって優れた取組み(通称「特色GP」)として採択されましたが、この七月には、芸術学部での「学外実習」や「伝統美術工芸講座」の取組みが「特色GP」に採択されました。ひとつの大学が二年連続で選ばれることはきわめて稀なことですが、これもまた京都精華大学の実力の一端です。

二年制の短期大学美術科から美術学部(現在の芸術学部)に生まれ変わったのは、二六年まえ、一九七九年のことでした。都市部での大学設置にたいする規制が厳しくなる時期に重なり、この四年制への発展的改組は大学にとってたいへん困難な仕事でした。その苦難を乗りこえて出発することのできた美術学部は、それからわずか十年あまりの期間で、京都のみならず関西でトップの実力があると、内外から評価されるようになります。

伝統美術工芸の宝庫である京都の街から必要とされる大学を目指して計画された「学外実習」と「伝統美術工芸講座」は、その美術学部発足のときから今日まで、四半世紀をこえ実施されてきた教育プログラムであることは言うまでもありません。現実の社会から必要とされる大学であるということは、そのような大学の教育課程に参加する、ほかならぬ学生諸君が現実の社会への責任意識を強くもち、それゆえに自らの感性と向上心とを高めることを意味していました。

社会そのものの大きな転換期にある今日、大学教育の改革を旗印とする私たちの大学がつねに時代の先駆けであることを示せるよう、このような現実社会との連携をさらに強めなければなりません。来年の春から現実となるデザイン領域とマンガ領域の学部としての独立には、それぞれの教育領域が独自性を発揮し大学の社会との連携をさらに際立たせるというねらいがあります。

日常にも社会経営にも密接不可分なデザインは、もとより他の芸術分野から独立した動きをもつ領域ですが、デザイン学部として独立することによって、産業社会との柔軟で、きわめて有機的な連携をはかる計画です。マンガがつくり出している現実の文化、そして社会については言うまでもないでしょうが、その独自性と可能性をさらに広い世界で実現させていくマンガ学部は、文字どおり先端的な大学教育の挑戦です。いずれも京都精華大学の将来性を決定づける学部計画ですが、大学へのこれまでの評価を維持し、さらに新たな評価軸を創出することができるよう、心から願っています。